北海道旅行のハイライトとして訪れた、ニッカウヰスキーの聖地「余市蒸溜所」。
前編では、創業当時の面影を色濃く残す重要文化財の建造物群や、国内唯一の「石炭直火炊き」によるこだわりのウイスキー製造工程をじっくりと見学してきました。
歴史とロマンに触れ、見学を終える頃にはすっかりウイスキーへの期待値が最高潮に達しています。
ということで中編となる今回は、事前に予約していた
「有料キーモルトセミナー」
での至高のテイスティング体験と、ニッカウヰスキーの歴史が詰まった
「ニッカミュージアム」
の展示をご紹介します!
(蒸溜所内にあるレストラン「リタズキッチン」でのお食事や、限定ボトルが並ぶショップについては次回の後編でお届けします!)
前編をまだお読みでない方は、ぜひこちらから先にご覧ください!
【北海道・余市蒸溜所】ニッカウヰスキーの原点へ!見学ツアーで学ぶ至高のウイスキー造り(前編)
有料キーモルトセミナー

施設内の見学を一通り終え、向かったのは「ニッカミュージアム」。
ここは歴史的な展示品が並ぶミュージアムであると同時に、有料試飲やセミナーが楽しめる施設でもあります。
今回筆者が体験するキーモルトセミナーの会場も、こちらの施設内にあります。
会場へ足を踏み入れると……

会場に入ってまず目を奪われたのは、左手の壁一面にずらりと並べられた圧巻のボトルたち。
大迫力のディスプレイに思わず圧倒されます。

スクリーンすぐそばのテーブルにも、整然とボトルとグラスがセットされていました。
美しい……そして文句なしにかっこいい空間です。

今回いただくことができるのは、以下の4種類です。
・余市 NV
・余市 ウッディ&バニラ
・余市 シェリー&スウィート
・余市 ピーティ&ソルティ
まずは指示があるまでそのまま待ちます。
セミナー開始までの間、グラスに注がれたウイスキーの色合いをじっくり観察してみることにしました。
標準の「余市NV」と比べても、キーモルトごとに明らかに色が違います。
ここで少し興味を惹かれたのが色合いでした。
シェリー樽由来の「シェリー&スウィート」は一般的に色が濃くなりやすく、逆にピーティなウイスキーはバーボン樽が使用されることが多く、色が薄いイメージなのですが、目の前にある「シェリー&スウィート」と思われるグラスは、
思いのほか色が淡い印象を受けました。
そんなウイスキーの色の奥深さに思いを巡らせているうちに、いよいよセミナーがスタートしました!
セミナー開幕とまさかの挑戦状

まずは講師の方から、ウイスキーの基本的な飲み方や知識についての説明がありました。

続いてテイスティング方法の解説へ。
パネルに写る竹鶴政孝さんのお姿が本当にかっこいいです。
筆者も普段から記載の通りにじっくり香りを確かめてからいただいているので、深く納得させられました。
講義も一通り終わり
「さあ!いよいよ至高のキーモルトを味わうぞ!」
と意気込んだその瞬間、ガイドさんからまさかの「爆弾発言」が飛び出します。
「実は皆様の机の上にある3種類のキーモルトですが、グラスに貼ってある①・②・③の番号と中身の順番を、あえてバラバラにして混ぜてあります。
ぜひご自身の鼻と舌で、正しい順番を当ててみてください!」
会場全体に広がるどよめき……!
思わぬ展開に驚きましたが、ウイスキーの魅力に開眼して早半年。
ここは半年の探求と飲み比べの成果を試す絶好の機会です。
「これは絶対に全問正解したい……!」
と気持ちが高まります。
至高のウイスキーテイスティング

不意打ちのブラインドテストから始まりましたが、気持ちを切り替えてテイスティングへ入ります。
テーブルには、試飲のお供としてちょっとしたお菓子も用意されていました。
社員さんの中でアンケートを取り、見事上位に選ばれたおやつなのだそうです。

・カマンベールチーズラングドシャ
・ウイスキーチョコレート
どちらも味わい深く、ウイスキーとの相性が計算し尽くされています。
ちなみに、どちらも敷地内のショップで購入可能です。
まずは基準となる「余市NV」からいただきます。
……美味い!
重厚なピートと力強さがありながら、実にスムーズで飲みやすい。
まさに最高の一言です。
さて、問題のキーモルトの順番当てです。
先ほど感じた「色」の違和感を念頭に置きつつ、慎重にグラスへ手を伸ばします。
まず、色が最も淡く見えた②を「余市ピーティ&ソルティ(青)」と仮定してテイスティング。
……ビンゴ!
間違いなく「ピーティ&ソルティ」です。
シェリー特有のドライフルーツ感はなく、潮風を思わせるピートと海のニュアンスがストレートに捉えられました。
次に③。
香りを嗅いだ瞬間に確信しました。
これは「シェリー&スウィート(赤)」です。
口に含むと、シェリー樽由来の華やかな甘みと、後味に残る心地よいビター感がしっかりと感じられます。
最後に①。
香りを嗅ぐと……強いバニラ香!
口に含むと心地よいタンニン(木っぽさ)がぐっと前面に出て、後からふんわりと甘いバニラ感が追いかけてきます。
間違いなく「ウッディ&バニラ(黄色)」です。
念のため、もう一度①・②・③を交互に確認しましたが間違いありません!
それにしても、余市のキーモルトはどれも尋常ではない美味しさです。
度数も55度と高めの原酒スタイルなのが、ウイスキー好きにはたまらないポイントですね。
今度は少しだけ加水してみると、閉じ込められていた香りが一気に華開きました。
本当に美味い……。
普段からアイラ系のスモーキーなウイスキーを好む筆者として最も感銘を受けたのは、やはり
「ピーティ&ソルティ」でした。
「これでハイボールを作ったら絶対に飛び上がるほど美味いだろうな……」
と確信する味わいです。
結果はいかに?!答え合わせ
ついにガイドさんから声がかかり、緊張の答え合わせの時間です。
正解は……
- 余市 ウッディ&バニラ:①
- 余市 シェリー&スウィート : ③
- 余市 ピーティ&ソルティ : ②
見事、全問正解でした!!
宮城峡蒸溜所へ訪問してウイスキーの魅力に開眼してから早6ヶ月。
自分の鼻と舌でしっかりとキーモルトの違いを利き分けられるようになっていたことが、本当に嬉しかったです。

ちなみに、セミナーではそれぞれの原酒から
「どのような香りや味わいの要素が拾いやすいか」
を分かりやすく解説していただけます。



自身の感じたテイスティングノートと照らし合わせることができ、大変勉強になりました。
約1時間半にわたる濃厚で贅沢な有料キーモルトセミナーはこれにて終了。
丁寧に解説してくださったガイドさんに感謝しつつ、続いてはミュージアム内の展示エリアをじっくり見学していきます!
ニッカミュージアム見学
ブレンダーズラボ
セミナー会場をあとにし、館内を散策します。
ツアーの最中にはじっくり見られなかった展示を、入口から一つひとつ巡っていきます。

一歩足を踏み入れると、そこには原酒の展示や、理想の味わいを創り出す職人技に焦点を当てた
「ブレンダーの部屋」
の再現展示が広がっていました。
特に興味深く感じたのが、同じ15年熟成であっても使用する「樽の種類」によって色の濃淡が全く異なることを示した展示です。

シェリー樽熟成の原酒は驚くほど深い琥珀色に染まっているのに対し、

バーボン樽熟成は透明感のある美しいゴールド。
樽がウイスキーに与える影響の大きさを視覚的に実感できます。

新樽熟成のボトルに、

リチャー樽…
チャー(樽の中を焼くこと)をもう一回したという意味ですかね?勉強になります。


さらに奥へ進むと、ニッカが誇る名酒たちが勢揃いしてお出迎えしてくれます。
「フロム・ザ・バレル」や歴代の「ブラックニッカ」シリーズなど、ファンにはたまらないラインナップです。

展示の先には、先ほどまでとは別に、飛び込みでも楽しめる洗練された「有料試飲コーナー」が顔を覗かせていました。
こちらは次回の後編にてじっくり堪能させていただきます!
創業者・竹鶴政孝とリタの情熱
有料試飲エリアの左手へと進むと、ニッカウヰスキーの歩んできた濃密な歴史に触れられる展示コーナーになっています。

ここでまず現れたのが、伝説の「竹鶴ノート」です!
創業者・竹鶴政孝がスコットランド留学時代、門外不出だったスコッチウイスキーの製法を克明に書き残したノート。
「これがなければ日本の本格ウイスキーづくりは始まらなかった」
と言われる、まさに国宝級の歴史的資料です。
その側には、デジタルスキャンされた竹鶴ノートを実際にページをめくるように閲覧できるコーナーもありました。
細部まで拡大して読んでみると、緻密なスケッチと丁寧で読みやすい筆跡から、政孝の几帳面で誠実な人柄がひしひしと伝わってきます。
その完璧な仕事ぶりに、ただただ感嘆するばかりです。



パネルには、単身渡英した政孝が現場の職人たちに交じり、誰もが嫌がるポットスチルの掃除から買って出て信頼を得ていった泥臭いプロセスが記されています。

また、政孝を支え続けた妻・リタに関する展示も非常に充実していました。

余市に骨をうずめ、地域を愛し、また地域の人々からも深く慕われていた政孝とリタ。

余市蒸溜所の前を通るメインストリートは「リタロード」と名付けられ、夫妻が設立を支援した幼稚園は「リタ幼稚園」として、今も余市の町にその温かい名を残しています。
山崎でのタッグと、大日本果汁の誕生


そして、展示の中には政孝が残した「日本国内での蒸溜所候補地メモ」もありました。
本場スコットランドに似た冷涼な北海道でのウイスキー造りを理想としていた政孝ですが、独立以前、まずは寿屋(現在のサントリー)の創業者・鳥井信治郎氏とともに、日本初の本格ウイスキー蒸溜所である
「山崎蒸溜所」
を立ち上げました。
どれだけ「竹鶴ノート」に素晴らしい技術や情熱が詰まっていても、巨大な蒸溜所を建て、樽が熟成するまでの数年間を耐えるための資金と事業基盤がなければ、当時の日本ではウイスキー造りをスタートすることすらできませんでした。
つまり、鳥井信治郎氏の
「圧倒的な資金力・経営力・マーケティング力」
と、竹鶴政孝の
「竹鶴ノートに宿る本場の技術・執念」
という二人の天才による運命的な出会いとタッグがあってはじめて、日本の最初の蒸溜所が誕生したというわけです!
その後、山崎での成功を経て、政孝の圧倒的なウイスキーへの情熱に惚れ込んだ大阪や北海道の経済界の有力者・実業家たちが、政孝を支えるために出資者となってくれたそうです。

しかし、独立して余市に「大日本果汁株式会社」を設立したあとも、試難は続きます。
ウイスキーが樽の中で熟成し、商品として出荷できるまでには最低でも数年の歳月がかかります。

売上が一切ないその期間、会社を倒産から救ったのが、余市特産のりんごを使って作った「ニッカ林檎汁(アップルジュース)」やジャム、シードル(果実酒)の製造・販売でした。
「本物のウイスキーを育てるために、まずは果汁で会社を支える」
という決意のもとで作られたこのリンゴ汁こそが、のちの「ニッカ(日果)」という社名の由来であり、ニッカウヰスキーの命を繋いだ救世主だったのです……。

そうして長い年月と厳しい極貧の時代を耐え抜き、1940年、ついに世に送り出された記念すべき完全な第1号ウイスキーが、こちらの「ニッカウヰスキー(Rare Old)」です!
ガラスケースの中で神々しく佇むそのボトルを見つめていると、1冊のノートから始まった途方もないドラマと、
竹鶴政孝が生涯を捧げた執念の重みに、胸が熱くなりました。
あまりの美しさに言葉が出ません…
このような伝説的な1本がお目にかかれることに感謝です。
ミュージアムで感動に浸った後は、いよいよお待ちかねの……!
(次回の【後編:グルメ・お土産・有料試飲編】へ続きます!)
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