【北海道・余市蒸溜所】ニッカウヰスキーの原点へ!見学ツアーと至高のウイスキー体験(前編)

ウイスキー

ウイスキーファンとして絶対に外せない場所が、北海道にあります。

NHKの連続テレビ小説『マッサン』の主人公・竹鶴政孝氏が創設した

ニッカウヰスキーの原点「余市蒸溜所」です。

将来、ウイスキーメインの居酒屋のお店を開く目標がある私にとって、ここは必ず訪れたかった学びの場であり聖地。

見学からテイスティングまで内容がかなり濃いので、前編・後編の2回に分けてじっくりレポートします。今回は

「見学ツアー&歴史的建造物」

を中心とした前編です。

余市蒸溜所見学に向けて

ニッカウヰスキーの蒸溜所は国内に

「宮城峡蒸溜所」と「余市蒸溜所」の2つがあります。

どちらもギフトショップは予約なしで利用できますが、蒸溜所内の見学には事前の予約が必須です。

公式サイトで先4週分の予約を受け付けているので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
(参考:見学予約申込 | 北海道 余市蒸溜所 | NIKKA WHISKY)

今回の訪問に向けて、4週間前の更新タイミングを待って無事に予約を獲得しました。

日にちが1日進むたびにすぐ枠が埋まるほどの人気っぷりです。

今回予約したのは「有料セミナー(3,000円)」。見学の後に、構成原酒の飲み比べができる本格的なコースです。

一般見学は9:30〜14:30の間で時間を選べますが、有料セミナーは10:30からの1枠のみでした。

当日絶対に遅刻しないよう、アクセスには余裕を持たせたいところです。

いよいよ余市へ!アクセスと道中の注意点

蒸溜所の最寄り駅はJR「余市駅」。

札幌からの出発でした。

電車での注意点(ICカードについて)

札幌から小樽までは交通系ICカードが利用できますが、

小樽から先の倶知安(くっちゃん)方面はICカードが利用できません。


札幌などからICカードで乗車した方は、必ず一旦「小樽駅」で改札を出て精算し、余市までの切符を再度購入しましょう。

そのまま乗ってしまうと、降車時の手続きに時間がかかってかなり面倒です。

さらに小樽駅に着いて時刻表を見て驚愕。

09:36発の電車を逃すと、

次の電車はなんと10:59発……。

東京と同じ感覚でいると痛い目に遭います。

JR函館本線 倶知安行き

北海道の主要都市・小樽からJR函館本線で3駅。


東京で3駅といえば山手線の新宿〜渋谷間(約3.4km)を想像しますが、この区間はなんと約20km。5倍以上の距離です。

当然、移動時間もかかります。

それも旅の醍醐味ですね!


車窓から景色を眺めると、集落よりも森や田畑が多く広がり、途中の駅で降りる方もまばらでした。

雄大な景色に揺られているうちに、目的地の余市駅へ到着です。

余市駅到着

駅に着くと、同じ車両に乗っていた人たちはほぼ全員が下車しました。

みなさん行き先は同じようです。


ホームにエレベーターやエスカレーターは見当たらなかったので、車椅子等を利用して電車で訪れるのは少しハードルが高いかもしれません。

改札(自動改札機ではなく駅員さんが切符を回収するスタイル)へ向かうと、さっそく蒸溜所のパネルがお出迎え。

いよいよ聖地へ足を踏み入れると思うと、気持ちが浮き足立ちます。

余市蒸溜所への道のり・入場

蒸溜所は重厚な石造りの建物で、駅から出るとほぼ直線上に目視ですぐに見つけることができました。


入場ルートは予約の有無で分かれており、見学予約がある方は「正門」から、それ以外の方は手前の信号を左折した入口から入ります。

今回は見学&有料セミナーの予約があるため、堂々と正門からの入場です。

正門では警備員さんが立っており、

「有料セミナーの予約です」

と伝えるとスムーズに通してもらえました。

「15分前になったら受付にて予約確認と支払いをお願いします」

との案内を受けます。

門をくぐると、目の前には赤い屋根の建物とウイスキー樽がお出迎え。

歴史を感じる佇まいが本当にかっこいいです。

見学の前に手荷物を預けようと辺りを見渡すと、お手洗いの看板を発見。

中に入ってみるとトイレの隣にコインロッカーがあり、ビンゴでした。

荷物を預け終えると、ちょうど約束の15分前です。

受付にて支払い

正門を入ってすぐ左手にある受付で予約の確認と支払いを済ませます。

支払いは現金のみなので事前の準備をお忘れなく。


「ビジターセンターにてお待ちください」

と案内され、施設内に入って声がかかるまで待機します。

ビジターセンター内には、ニッカのエンブレムや施設全体のジオラマなど、さまざまな展示がありました。

表から見た正門はほんの一角に過ぎず、想像以上の広さに驚かされます。

ウイスキー製造の心臓部を巡る蒸溜所見学

ガイドさんから声がかかり、いよいよ見学ツアーがスタート。

スクリーンの前に用意された椅子に座り、まずは座学から始まります。


「日本で本物のウイスキーを作りたい」

という創業者・竹鶴政孝氏の強い想いと、余市蒸溜所創設の歴史を学びました。

続いて製造工程の勉強です。

ウイスキーは

「乾燥 → 粉砕 → 発酵 → 蒸溜 → 熟成」

という順序で作られます。

会場では乾燥させた二条大麦の香りを嗅ぐことができ、ピート(泥炭)を焚いたものは、この時点ですでにしっかりとしたスモーキーな香りがしました。

座学を終え、いよいよ施設内の見学へ出発です。

乾燥塔(キルン塔)

かつて、ウイスキーの原料である二条大麦をピートを燃やして乾燥させていた塔です(現在は使用されていないとのこと)。


横には石狩で採れたピートが展示されていました。

ピートとは、寒冷地の湿地帯などに生育する草木や苔が、何千年もかけて枯死・堆積してできた「泥炭」のこと。

石狩のピートは15cm形成されるのに1000年もかかるそうです。

現在は輸入品を余市のウイスキーに使用しているそうで、こちらのピートは使用していないそうです。

ウイスキーに使う大麦は発芽させたのちに乾燥します。

大麦を発芽させてから乾燥させる理由は、発酵に必要な「糖」の生成を効率よく活性化させるためだそうです。

粉砕・糖化塔

乾燥させた大麦を粉砕し、デンプンを酵母のエサとなる糖分に変える「糖化」を行います。


粉砕した大麦と温水を混ぜて撹拌し、濾すことで麦汁(麦芽糖)を生成します。

残った大麦のカスは、近くの牧場で牛の餌として無駄なく活用されているそうです。

この日は設備の稼働が止まっており、実際の作業風景は見られませんでした。

醗酵塔

麦汁を冷却し、ニッカ独自のウイスキー酵母を加えて発酵させます。

酵母が糖分を食べ、アルコールと炭酸ガスを造り出して「もろみ」になります。

ここまではビールの製造工程と同じだそうです。

蒸溜塔とこだわりの「ポットスチル」

蒸溜とは、液体を一度温めて「気体」にし、再び冷やして「液体」に戻すことでアルコール度数をグッと高める分離技術のこと。

そして、私が大好きな「ポットスチル」があるのがこの蒸溜塔です。

ポットスチルは、ウイスキーの味わいや個性を決める心臓部ともいえる銅製の大きな釜。

この独特のフォルムがたまらなく好きなんですよね。


実は蒸溜所によって形状が異なり、

余市は「ストレートネック」、

宮城峡はひょうたんのような「くびれ」があります。

個人的な見た目の好みとしては宮城峡の形状が好きですね。

ここ余市蒸溜所では、世界でも非常に珍しく、本場スコットランドでもほとんど見られなくなった

「石炭直火炊き」

を現在も頑なに守り続けています。


安全面や温度管理のしやすさから「間接蒸気」が主流となる中、

余市が直火にこだわるのには明確な理由があります。

  • 圧倒的な高温によるメイラード反応: 石炭の強力な火力で底を直接ガンガン熱することで、もろみの成分が焦げるように化学反応を起こし、香ばしさや力強いコクが生まれます。
  • 男らしいヘビーな原酒: 効率より手間をかけるこの強い直火によって、麦の旨味やピートが凝縮された「骨太でオイリーな原酒」が生まれるのです。

竹鶴政孝氏がスコットランドの「ロングモーン蒸留所」で学んだこの手法を守り抜いているからこそ、余市特有の重厚な味わいが生まれるのですね。

第一貯蔵庫と「天使の分け前」

蒸溜されたばかりの原酒は、無色透明(ウォッカやジンのような見た目)です。

これを樽に詰めて貯蔵庫で寝かせます。

ウイスキーは樽での貯蔵によって色が変化し、年月をかけて無色透明から美しい琥珀色へと染まっていきます。

この熟成の過程で、中の原酒が少しずつ蒸発して減っていく現象を

「エンジェルズ・シェア(天使の分け前)」

と呼びます。

「減ったお酒はどこへ行った?

きれいで美味しいお酒だから

天使たちがこっそり盗み飲みしているに違いない」

という、昔の人のロマンチックな解釈です。


ただ量が減るだけでなく、水分とアルコールが絶妙に抜け、樽の木香が馴染むことで角の取れたまろやかな味わいへと育ちます。

国の重要文化財に指定された歴史的建造物群

余市蒸溜所内にある乾燥塔、蒸溜塔、第一貯蔵庫などは、2022年に国の重要文化財に指定されています。

ここからは、見学ルートにあるその他の文化財指定の建物をご紹介します。

旧事務所と「大日本果汁」の軌跡

ニッカウヰスキーの「ニッカ」という名前の由来をご存知でしょうか?
実は創業時の社名である「大日本果汁株式会社」の「日(ニ)」と「果(カ)」を取って名付けられたものです。

ウイスキーは仕込んでから商品として出荷できるまで何年もかかるため、創業時は「売上ゼロの空白期間」が生まれてしまいます。

その間の資金繰りを保つため、竹鶴政孝は地元・余市の豊かな特産品を活かし、リンゴジュースやシードル(発泡性のりんご酒)、ジャムなどを製造・販売して会社を存続させました。


あの甘酸っぱいリンゴ製品が、日本の本格ウイスキー誕生を陰で支えていたという苦闘の歴史には胸が熱くなります。

そして、こちらが創業当時の事務所(現・旧事務所)の外観です。

竹鶴政孝が実際に執務室として使っていた建物で、内部はクラシックで落ち着いた素晴らしい空間です。

白いカバーがかけられたソファ、鹿の剥製、温かみのある照明など、重厚な空気感がそのまま残っています。

棚には往年の「G&G」やスーパーニッカのヴィンテージボトル、リキュール類がずらりと並んでおりました。

リタハウス(旧研究室)

1931年(昭和6年)に建てられた建物で、もともとはブレンディングなどの研究を行う「旧研究室」でした。

のちに、政孝を支え続けた妻・リタへの敬意を込めて「リタハウス」と呼ばれるようになりました。


以前はこの中でイギリス式のアフターヌーンティーを楽しめる喫茶室として営業していましたが、現在は建物の保存の観点から内部への立ち入りは終了しています。

くやしい!ぜひ内部に潜入したかったです!

旧竹鶴邸

竹鶴政孝とリタが実際に暮らしていた私邸(1935年築)です。一時は敷地外へ移設されていましたが、2002年に再び蒸溜所内へ移築・復元されました。


当時の和洋折衷の生活感が漂い、情熱を注ぎながら二人で過ごした暮らしの気配が感じられます。中は資料館として一部公開されています。

政孝がリタへ贈った本や、愛用のグラス、そして「飲み過ぎ防止の詰め替えボトル」などが展示されていました。

本人たち亡き後に、こうした愛用品や言葉が展示されているのは少しむず痒い気持ちにもなりますね。

前編まとめ

初めて訪問した余市蒸溜所。

国内唯一の石炭直火炊き製法を間近で見学し、竹鶴政孝のウイスキーに対する圧倒的な情熱を肌で感じることができた、本当に素晴らしい体験でした。

前編では蒸溜所内の見学工程と歴史的建造物をお届けしました。


続く中編では、事前に予約していた「有料キーモルトセミナー」へ参加し、余市を構成する貴重な原酒たちを心ゆくまで味わっていきます!そして、ニッカミュージアム内の展示の見学をしていきます!

更新をお楽しみに!

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